2008'04.20.Sun
ゴールデンデイズ(仁⇒光也)
銃弾の音。爆撃の轟き。泣き叫び同胞を抱き寄せるもの。
1942年、第二次世界大戦の真っ只中の北アフリカ。
大正10年から何年経ったろうか。
光也が僕の側から消えてから。
一体どのくらいの時間が経ったと言うのか。
光也が生まれてくるまで後何年あるのだろうか。
「平成」の年号までどのくらいの時間を経れば光也に会えるというのだろうか。
でもきっと、もう叶わない。
どんなに老いぼれたとしてもお前に会えるというのならそれでも良いか、なんて思いもしたけれど。
ほら、もう僕の周りには同胞の亡骸がそこらじゅうに広がっている。
手足がもげたもの。首の無いもの。身体すら生前の原形をとどめていない肉塊。
ほら自分も。もう下半身がない。
微かに動く手を酷使してポケットに入ったチェスの駒を取り出した。
「黒のナイト」
最後に光也がくれたもの。
「お守り」だと彼はそう言って笑いながら消えていった。
僕が不幸であることを許さないといってくれた最愛の親友。
だから僕はこの「黒のナイト」にかけて幸福のために戦った。
ああ、大丈夫。
世界はあまりにも変わってしまったけれど。
終焉の鐘の音が響いたとしても。
僕は確かに幸福だった。
お前とのあの僅かな時間を共に過ごせたこの記憶こそが僕にとっての幸福の証。
この記憶がある限り何が起ころうとも僕は幸福で有り続けるんだ。
ああ、だから今度はお前が幸せであるために。
最後の力をかけてお前が生まれてくるこの世界を守ろうではないか。
もう一度会える日を願って。
世界の終焉
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2007'12.31.Mon
想いを告げることは無いと思ってたのに・・・
nobody knows his latter end
ずるり、ずるりと引きずる体は重たくて。
改めてもう残された時間が無いことが分かった。
なのに貴方にかける言葉が見つからない。
いや、見つけたくないのだ。
口を開いてしまえば貴方に伝えたい言葉がいくつもありすぎて。
だけど伝えたい言葉なんて二つしかなくて。
謝罪と思慕の言葉を。
繰り返し何度も言ってしまいそうで。
引きずる道はでこぼこと石まみれで貴方の体をまた傷つけてしまう。
じわり。
じわり。
私が突き立てた傷口から血が流れ落ち地面に染み付いていく。
じわり。
肉片が落ちてべちゃりと音を立てた。
それが何か理解できずにぼぅと見るとさらさらと崩れ落ちていった。
今しがた血が染み付いた地面をみるとすでに血の跡が無くなっていた。
彼が崩れて来ている。
何時消えるか分からない、命の灯。
彼の実家に着くまで間に合うだろうか。
足を進めろ。
これは罪だ。
なんとしてでも届けたい。
ずるり。
「・・・朽木・・・」
掠れた低い声。
いつもの荒々しい聞いているだけで元気を与えてくれるような声はもう出ないのだろう。
悲しかった。
苦しかった。
「・・・待ってください。もう、貴方の実家まで、直ぐですから」
だからそれまでに崩れ消えないで。
願いは口に出さない。
出した途端に願い自体も何もかも崩れてしまうかもしれないから。
「・・・もう、直ぐですから、私なんかのために言葉を発さないでください。」
動くたびに血が流れ肉片が落ち、消えていく。
「家族の為に」
残していてください。
ずるり
ずるり
引きずる音だけが静かな空間に響く。
夜明けまでまだ時間があるのだろう、辺りは暗く静寂だけが横たわっていた。
異質の音。
ずるっ・・・ずる・・・
「・・・・・・泣くな・・・」
耳に届いたのは私を心配する優しい声。
優し過ぎて涙が出そうになった。
「・・・泣いてなんかいません。」
「俺は・・・大丈夫だから・・・」
何が大丈夫なんだろう。
気休めの優しさなんて残酷以外の何物でもないのに。
「・・・都・・・」
愛しい妻が殺され仇を取った後、貴方は都殿の後を追う気だったのですか?
聞くことも出来たはずだけれどもいまさら無駄な気がした。
胸が痛かった。
嫉妬。
こんな時でさえ感じてしまうなんて。
私にその資格なんてないのに。
「貴方は優しいです。」
苦しい。
「・・・・・・」
悲しい。
「貴方は優し過ぎるんです。」
痛い。
「・・・貴方は」
痛い
「残酷です。」
悲しい・・・ーー
涙が出そうになりぎゅっとつむる。
じわりと溢れる涙は止まりそうもなくて。
何時落ちるか分からなかった。
「・・・朽木」
「止まって・・・くれ」
「!それでは・・・間に合い・・・」
慌てて口を塞ぐ。
言いたくない、敵わない言葉。
「いいから・・・こっちへ・・・」
もう死にかけているというのに以前として強い光を放つ貴方の双眼。
有無を言わせない強い、強い・・・
「・・・はい」
頷き、海燕の横に寄る。
海燕の口が僅かに開くと、ヒューヒューと肺の音がした。
「やはり、時間を・・・無駄にするわけには・・・」
「い・・・ぃから・・・」
血まみれの腕を持ち上げて少し引き寄せられる。
ルキアの耳元に海燕の唇が当たる。
ぼそりと海燕が呟いた。
「 」
それを聞いた瞬間、堪えていた涙が一粒落ちた。
このまま海燕殿に縋り付きたい。
貴方が逝くまで間の僅かなこの時間だけでもいいから。
最後の最後まで、側に居たかった。
伝えたい想いは幾つも幾つも有りすぎて絡まりすぎて言葉に出ない。
それでも放った言葉は。
「 」
微かに笑う貴方が“ ”しくて。
何度も何度も。
「 」
「 」
「 」
繰り返し紡ぐ私の言葉を仕方なさそうに嬉しそうに聞く貴方が“ ”しい。
彼の実家が見えて来た。
無表情で鬼のような仮面を被ろう。
彼を刺した刀を鞘から取り出す。
私が海燕殿を殺したんだとすぐに分かるように。
彼との最後のやり取りなんてなかったように。
「兄ちゃん!?」
少年らしい高い声が響く。
あれが弟か。
やっとたどり着いた。
彼を家族の元に・・・
「・・・何があったんだ!?」
「私が殺した。」
冷たく言い放つと弟の顔が歪み、私を睨み付ける。
その責めるような瞳に、私が彼を殺したんだと再確認された気がした。
不意に泣きそうになる。
泣き顔なんて見せない。
どうせなら責め立てられたい。
幾つもの理由から冷徹な仮面を被り離さなかった。
それを見据えたように笑う貴方の最後の言葉は、
「ありがとう」
それは何に対してなのかは分からない。
でも、笑った顔は私が見たかった、日だまりのようで。
固く閉ざした心が表情が一瞬緩みそうになり、目を反らした。
そのまま向きを変え彼から離れる。
振り向く事なんてできやしない。
余りにも私は・・・罪深くて。
届かないけど最後に貴方に言った言葉は
「 」
そのまま志波家が見えなくなるところまで駆け抜ける。
足が絡みぶざまに転ぶ。
直ぐに立ち上がり、空を見上げると目に一粒雨粒が入った。
それを皮切りにしたように雨が暑い雲から降り注ぐ。
不意に木々の木漏れ日が見えたきがした。
あの頃の日だまりの世界に戻れるなら・・・
今、私をたたき付けるのは雨。
涙なんて流さない。
涙なんて流さない。
涙の代わりのように降り出した雨が頬を伝う。
全身に染み付いた血を洗い流すように土砂降りの雨粒が全身をたたき付けた。
手を見ると血まみれだった掌は朱色の筋が幾つも流れている。
海燕殿の血。
私が刺した。
私が殺した。
赤い赤い血。
「朽木・・・」
「好きだ」
彼が私の耳元で呟いた言葉が不意に蘇る。
貴方は優し過ぎるのです。
その優しさが残酷過ぎるくらい相手を傷つけるとわかっていながら。
過度な優しさは残酷。
それを教えてくれた貴方。
その貴方はもういない。
優しい日だまりの世界にはもう、程遠い・・・ーー
fin
2007'12.18.Tue
思い出の鍵
出会いはどんな風だったのかと今更ながら思う
忘れるはずが無いなんて思っていても
気を抜くとほらすぐに忘れてしまう
どうでも良い出会いでは無かった筈だ
大切に大切にしようと思ってるのに
次々とお前とのルキアとの思い出が募るたびに忘れていってしまう
「それはアシド、お前が今を生きているからだよ。」
隣にいる小さな少女が問いかけに答える。
「・・・・・腑抜けているとは言わないのか」
少々、いつものルキアとは違う感じがした。
「今を生きているから思い出が溜まっていく。昔のことは少しずつ忘れているふりをしているだけだよ。」
語るように、小さな子供をあやす様に穏やかな声が鼓膜に伝わる。
「忘れているふり・・・・・・・・?」
「私たちは全てを覚えているほど賢くなんて無い。だから思い出は引き出しにしまっておくのだ」
穏やかで強い言葉は意味をつかめなくて。
「・・・・・・・・・?」
眉をひそめていると、意味がつかめていないことが分かったのか、ふふっと笑った。
「・・・・比喩だよ。心の奥の奥にしまっているんだよ。その思い出はとても重要だから。」
どうもルキアの言っていることが分からない。
「大切なら忘れるはずが無いだろう」
「それでも忘れるのが私たちだから、生きている私達だから。」
生きている、そこを強調するルキアの瞳は寂しげで。
「死んだらそこで終わりだ。後は生きている者が覚えていなければならない。」
ルキアにも仲間を失った過去があるのだろうか?
「生きている・・・・・・・」
今、生きている自分を見る。
死んだ仲間の影がよぎった気がした。
不安がよぎりルキアをみる。
「私も閉まっているよ、忘れない大切で悲しくて愛おしい過去。でも忘れているふりをしなければ上手く生きていけないから。」
そこには吹っ切れたような悲しい笑みが広がっていた。
瞬間、ルキアを抱きしめる。
彼女は無理をして思い出したくも無いことを思い出しているようだった。
「その引き出しを開ける鍵は他でもない私しか持っていないけど。」
あぁ、やっと分かった。
思い出すことが引き出しの鍵を開けること。
彼女は自分から鍵を開けて、今、震えている。
それでも穏やかに話すルキアの声は心地よく、柔らかで。
「・・・・・・・」
暖かな体温がじんわりと広がる。
安心したようにすがる身体は華奢で抱きしめる力を弱くした。
すぐに折れてしまいそうなこの身体に強靭な意志を持っている少女。
「お前との大切な出会いの思い出は私が鍵をもっているから」
ほら、俺を射るように見つめる瞳はとても気高く綺麗で。
つい、微笑を浮かべてしまう。
ルキアはそれを見て驚いたように目を見開くと、また穏やかな声で言う。
「また思い出したくなったら、一緒に話そうではないか」
嬉しそうに笑うルキアの表情に先程の寂しさは微塵も無かった。
「・・・・・ああ」
微笑み会う二人
するといたずらっぽくルキアは笑い、
「アシドだって私の鍵を持っているんだよ?」
そう言った。
お前が俺の側にいる限り
鍵はきっとまた開くだろう
二人の鍵
二人が出会った証
思い出の鍵はきっと側にある
fin
お粗末さまでした。
久しぶりにパソコンで書いた。
30分もかからなかったよ・・・・・・・・・?
いつも携帯でカコカコ打っていると時間が・・・・・・・・・・・・
でも親がいるからいつもはPCで書けない。
思い浮かばなくなっちゃう。
最初のタイトルが「何もかも忘れるほど俺らは腐ってないはずだ」
なんだからアシルキでどれほど暗いことを書こうと思っていたんだか。
アシルキをシリアスにするには仲間を引っ掛けて海燕出すのが一番。
(海ルキ好きでごめんなさい。)
でも結局ぼのぼの。
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